【質問】就職活動の準備中です。総合病院や比較的規模の大きな病院で、理学療法士として成長できる環境に身をおきたいと考えています。成長できる病院の特徴は何ですか?
来年、無事に国家試験に合格できれば、理学療法士になる予定の学生です。
今は、国試対策を行いながら、就職活動の準備もしている状況です。
私は、できれば総合病院や比較的規模の大きな病院に就職して、まずは理学療法士として成長できる環境に身をおきたいと考えています。
しかし、どこの病院に行けば良いのかの判断がつきません。
20代のうちは、できれば色々な分野で多くの事を学びたいなと考えていてます。
就職先選びや、成長できる病院の探し方などにについて、アドバイスをお願いします。
(20代 女性 理学療法士学生)
質問者さんのように、成長できる病院に就職したいと思っている学生さんに、良い病院の見つけ方をアドバイスさせて頂きます。
20代 女性 理学療法士学生からの質問・相談
就職先の選び方について悩む理学療法士の学生さんから、就職先探しに関する質問を頂きました。
- 成長できる環境とは?
- 成長できる環境にある病院の見極め方とは?
これらの点について、これから就職活動を行う学生向けにいくつかアドバイスをさせて頂きます。
「自分で、自由に取り組みたい。自分のペースで成長したい!」という方もいると思いますが、ここでは、施設の新人教育システムが整っているところを成長できる施設と位置付けています。
ぜひ施設探しの参考にしてみて下さい。
理学療法士として、成長できる環境が良い。
セラピストとして、成長できる環境とは?
「成長」というのは、各年代でよって変わってきます。新人時代に限定して考えると、入職してすぐに一人の療法士として扱われるのではなく、免許を取得していても、まだまだ半人前以下として見てもらえるかは、環境としては非常に重要です。
いきなり担当患者を割り振られて、取得単位のノルマを課せられるなど(つまり、一人前の療法士と同じ扱い)は、新人の理学療法士・作業療法士にとって、なかなか成長しにくい環境と言えます。
まだ何もできない未熟者として、
- 「指導してもらえる環境にあるか。」
- 「指導してくれる人がいるか。」
といった事が重要となります。
部活動の顧問やコーチの話
小・中学生の部活動ではよくある話ですが、優れた顧問が就任するなり、弱小チームがいっきに地区大会で優勝したり、県大会ベスト4に入ってきたりします。
逆に強豪校と思われていた学校から、長年勤めていた顧問がいなくなったとたん、普通レベルのチームに後退する事もあります。
これを、新人療法士の臨床現場に置き換えてみて下さい。
自分がいくら頑張っても、頑張り方を間違えると成果が出ない(成長できない)のに対し、ちょっとしたコツを知っている人の指導を受けたとたん、その才能が開花して一気に急成長する事があります。
つまり、優秀な理学療法士・作業療法士になりたければ、優秀な先輩セラピストから学べる環境に身をおくというのが、新人から3年目くらいの期間は、一番重要な事だったりするわけです。
少なくとも、入職後まもない新人の理学療法士に、「一人前の療法士になれるように学ばせる」よりも、「ノルマを課せて積極的に単位をとらせる」ような病院では、教育体制がしっかりしているとは言えず、大きな成長は期待できません。
このような環境は、仮に初任給が高くても、セラピストとして成長したいなら絶対におすすめしない職場となります。
新人の理学療法士や作業療法士にとって、成長する上で大切な事は、志を高く持ち、目の前の事を頑張る事が大切ですが、自分ではコントロールできない外部要因である「優秀な先輩から教われる環境」も同じように重要な要素であると考えて下さい。
ここでは、希望する病院が優秀な先輩から学べる環境にあるかをチェックするポイントを紹介します。
優秀な先輩セラピストから学べる環境の見極めポイント3つ
1.学術大会や協会などへの参加体制
一つの分かりやすいところでいけば、全国学会に毎年演題を出している病院や、ジャーナル・文献、参考書・教科書などを執筆している人がいるか。
その病院の科長や部長、出身者が、日本理学療法士協会や県士会などの役員等に名前が連らねているかなども一つの判断材料です。
必ずしも、学会に参加しているから凄いとか、文献を書いているから凄いとはなりませんが、日々の忙しい臨床の中で学術についても怠る事なく取り組む施設は、ある一定程度の教育システムが構築されています。
また、病院の院長や経営者陣も、利益という数値を追っかけるだけの経営ではなく、現場で働くセラピストの技術向上や学術活動を大切にしていると考え、職場環境としても頑張る人を応援する体制が整っていると考えられます。
2.教育部門のリーダーがいるか。そのリーダーは、リハビリテーション科のエースなのか。
どこの病院でも、多かれ少なかれ研修期間などを設けて、新人の教育は行います。
この教育方法が重要となります。
例えば、新人教育を個々の現場の状況に任せる場合(例えば、気づいた人が教えてあげましょう。や、分からない事があれば先輩だれでも良いから質問して下さい。などの対応)と、
教育部門なるものが存在して、その教育部門のリーダーのもと教育カリキュラムや一定の方針に従って行われる体制では、全然違います。
新人理学療法士は、自分が分からない事が何か分からないという状況であり、教育側にとっても、誰が何を苦手としているか、何を分かっていないのかなどを分かっていない状態です。
この状況で、前者の対応を行う病院は、お世辞にも新人教育体制が整っているとは言えません。
さらに、できる事であれば、新人教育に携わるリーダーは、その組織のエースである必要があります。体裁だけの教育システムではなく、リハビリテーション科のエースが、新人教育に積極に関わる環境にあるか、これが重要となります。
3.優秀な中堅療法士が、退職せずに残っているか。
幹部クラスの超ベテランが数人に、あとは新人や3年目以下というような病院は注意が必要です。
もし、8年目〜15年目くらいの中堅クラスの療法士がいる場合は、その人が組織の頼りにされていない場合も注意が必要です。
つまり、優秀な中堅が、どんどん抜けていくような病院は、あまり良い病院ではないという事です。
新人の頃は右も左も分からない状態だったけど、ある程度技術も知識も身についてくると、現場の不条理な点に気づきはじめます。ここが解決できなれば、中堅セラピストはぞくぞくとやめていきます。
しかも、周りから優秀と評価される人から順番にやめていきます。
もし、優秀な中堅の療法士が辞めずに残っているというのは、この問題が少ないと考える事ができます。中堅クラスのセラピストから高く評価されている病院は、問題点が少ない病院である可能性が高いです。
最後に、
ここで解説した事は、入職前に気づける事と気づけない事がありますが、一つの視点としてこんな事があるんだなと感じてもられるだけでも良いかと思っています。
もし、職場見学に行ける場合は、若手療法士を教育している様子や、経験年数10年前後の中堅セラピストが在籍しているか、そしてその人は現場で優秀な人材として扱われているかなどを見ておくのも良いかもしれません。
自分自身が頑張る事は大前提として、セラピストとして成長しやすい環境に身をおくという事も、非常に大切な事です。