あなたの上司は、部下のちょっとしたミスに対して、冷静に的確なアドバイスしてくれる優秀な上司ですか?
看護師長の中には怒ってばっかりで、アドバイスというよりは感情表現ばかりする人がいます。そんな人って、本当は師長失格なんだけど、上手に付き合わないと自分が不利になるだけだったりします。
ここでは、怒りっぽいパワハラ看護師長の上手な対処法として、「ペーシング」という技術を紹介します。
ペーシングとは?
ペーシングとは、心理学では、「相手の話し方や状態、呼吸などのペースを合わせること」とされています。
ペーシングのポイントになるのは、「話し方」「相手の状態」「呼吸」です。
相手の話し方にペーシングするときは、声の調子や話すスピード、声の大小、音程の高低、リズムなどを合わせていきます。
相手の状態にペーシングするときは、明るさや静けさ、暗さ、感情の起伏などに合わせていきます。
呼吸にペーシングするときは、相手の肩や胸や腹部の動きを観察しながら、同じ呼吸のリズムになるよう合わせていきます。
ペーシングされると心地良い
上手に「ペーシング」されると相手は、自分の行動に対する相手の反応に不快感を感じないので、よりその感情が強調されたり、快感情が生まれます。
逆にペーシングが下手だったり、上手にペーシングできていない場合は、自分の行動に対する相手の反応に違和感を感じたり、不快感を感じ始めます。
この、ペーシングできていない状態を意図的に行う事を、「ペーシング」に対して「ディスペーシング」と言います。
わざと下手なペーシングをする事で、今起きている感情に変化を与える事ができます。
しかし、このディスペーシングは、「やりすぎない」というのが重要で、あからさまなディペーシングは余計な怒りを生じさせてしまいます。
ペーシング:相手の話し方、状態、呼吸に合わせる事
ディスペーシング:わざとペーシングしない事
怒りにはディスペーシングを使うのですが、ここにテクニックが求められます。
あからさまなディスペーシングをしてしまうと単に人間関係が破綻してしまう可能性がある事にも注意が必要です。
ペーシングとディスペーシングを使い分ける
「ペーシング」 つまり、「非言語的な同調」によって起こる事は、自分と相手との間にラポールを築く事です。
自分が笑っているの時に、ブスッとした表情をしている人よりも、一緒に笑ってくれる人の方が、自分と気が合っているなと無意識に感じますよね?
これは、怒っている時にも同じ事が言えて、怒鳴りちらしたときに、相手も威勢良く対抗すると、ますます怒りがこみ上げ、ここから大きな争いが勃発します。
しかし、天然ボケのような対応をされたり、予想もしない事が起こる(例えば、タイミング良く?おならが出るなど)と、ペースが乱されてしまい、怒っていた感情がどこかに消えてしまったりします。
つまり、非言語的な同調である「ペーシング」をされると、今の感情をより強化するのに対して、「ディスペーシング」では、相手のリズムを乱し、現在の感情を弱めます。
怒った時のディスペーシングのポイントは?
怒った相手に対して用いるのは、「ディスペーシング」である事は、ここまでの説明を読めば大丈夫と思いますが、どのようなディスペーシングが効果的かを理解する必要があります。
重要な事は、その時以外の場面(つまり、日常的な関わり合い)で上手に「ペーシングできているか?」が問われます。
相手の立場になってみると分かりやすいかもしれません。
日頃から、上手なペーシングをしてくれる相手が、急にペーシングしてくれなかったら、何となく違和感を感じませんか?
日頃からペーシングが下手な人が、ディスペーシングをしても何とも思わない(というよりも、変な奴が今日はより一層変な奴になっていると感じるだけ)ですが、日頃から上手に同調してくれる人が、思ったような同調をしてくれないと、それだけで相手は言語的に表現する事が難しい「違和感」を感じ、ペースを乱されます。
怒りやすい相手をコントロールするには、日頃からのペーシングが大事
言語的な同調ではありません。お世辞を言ったり、太鼓持ちをする必要は一切ありません。
息使いや、呼吸のリズム、話すスピードなどを合わせるだけです。
一見難しいように感じますが、嘘をついてお世辞を言うような言語的なアプローチではないので、思っているよりも簡単です。
話す相手に対して、相手のリズムを見ながら、自分のリズムをほんの少しだけ合わせてみてください。
呼吸リズム、話すスピード、息使い
対面している時は、少しだけ向いている方向を同じ向きにします。(完全な対面にならない。)
相手に合わせるだけなので、特別難しく考える必要はありません。
怒られている時にはディスペーシング
怒りっぽいパワハラ看護師師長が、いよいよ怒り出したら、その時はわざと、相手とのリズムをズラせる「ディスペーシング」です。
これまでの関係で、ラポールを築いてきた相手なら、ペーシングをしないだけで、すでに言葉には表せないような、何となく「違和感」を感じているはずです。
そこに、
- ゆっくりとした息使い・呼吸をし、(相手は怒っているので早くなっている。)
- 返事のタイミングをワンテンポずらしてみる。
- 謝罪を求められているタイミングで、わざと質問をしてみる。
などなど、ペースを乱す「ディスペーシング」を実践してみて下さい。
怒りっぽい人の中には、怒っているうちに気持ちが良くなっていき(※意識に気持ち良くなっているという意味ではない。)、いつの間にか、余計に怒っている人がいます。
「よく怒る人」の多くが、怒る事によって気持ちが高ぶっていて、無意識的にこの高ぶり・興奮状態が快感情になってしまっています。
勘違いされやすいのですが、相手に刃向かう事が「ディスペーシング」ではありません。
相手に刃向かう事も、怒るペースに合わせて謝罪し続ける事も不適切な「ペーシング」になります。
怒った時に、同調(不適切なペーシング)してくれる人に対しては、さらに怒りやすい関係になっていきます。
上手に、相手の怒っているリズムをズラせて、何となく感じる違和感を持たせてあげると、怒る事によって生まれていた快感情が少しずつ弱くなっていきます。
一発で劇的な変化を生せるというよりは、じわりじわりと効果を出てきます。
効果が出てくれば、すぐに効果が消える事はなく、比較的永続的な関係になっていくはずです。
怒りっぽいパワハラ看護師長を上手なペーシング&ディスペーシングによってコントロールして、自分に対しては怒らない看護師長に育てていきましょう。