
私は、医療職が専門の職業カウンセラーの柏原です。
相談者本人にも承諾の上で、職業カウンセリングの一部を公開させて頂いています。
「新人理学療法士です。僕は理学療法士に向いていません。まだ1年目なのに、すでに辞めたいという気持ちでいっぱいです。」


彼の悩みは、「性格的に理学療法士が向いていないと感じるようになり、さらに患者さんに対する罪悪感と職場での先輩からプレッシャーなどで、毎日が辛くなってしまい理学療法士を辞めたくなった。」でした。
私には、彼が理学療法士に向いていないようには感じませんでした。
少なくとも新人時代(理学療法士1年目)のうちに、理学療法士が向いていないと決めつけてしまうのは間違っていると思いました。
なぜなら、患者さんに対する罪悪感は、「もっと良いリハビリを提供したい。」という気持ちから来るものですし、先輩からのプレッシャーを感じる事ができるというのも、すごく大切な事です。
「まだまだ成長できていない。」「もっと成長しなきゃ!」というような、向上心からくるものが、結果的に自分を追い詰めているだけだと感じました。
そもそも、本当に理学療法士に向いていないなら、学生時代の実習をクリアする事ができるはずないし、難しい国家資格を取得できるはずもありません。
もしかすると、周囲と自分を比較してしまったり、自分の悪いところ・周囲を劣っているように感じるところばかりに目が向くようになってしまったのかもしれません。
私としては、新人理学療法士のうちに、理学療法士の仕事が向いていないと自分で勝手に決めつけて、リハビリセラピストの道を閉ざすのだけは避けてほしいと思いました。
彼の気持ちは、かなり理学療法士を辞める方向に傾いている状態の時に私の職業カウンセリングを受ける事になりました。
相談者は、経験年数1年目の新人理学療法士
彼と私の最初の出会いは、新人理学療法士になって約3ヶ月〜4ヶ月が経過した頃でした。
彼が先輩へ、現在抱えている悩み(理学療法士を辞めたいという悩み)を相談した事がきっかけで、職業カウンセリングを受けるように上司に言われ私を紹介され、私の職業カウンセリングを受ける事になりました。
彼は、関東出身の20代男性理学療法士です。
東京の高校を卒業後、理学療法士養成校(専門学校)に入学し、ストレートで理学療法士免許を取得しました。
新人理学療法士として、神奈川県横浜市のリハビリテーション病院に入職します。
理学療法士を辞めたい理由は、自らへの過度なプレッシャー
彼の悩みは、
患者さんに対する悩みと、同僚の理学療法士と比較したり、先輩から感じるプレッシャーによる、自己肯定感の欠如のようです。
その原因としては、
- 担当している患者さんへ適切なリハビリを提供できていないと感じている事
- 自分の技術に自信を持てない事。
主に、この二つというように感じました。
彼自身、何も努力していないわけではなく、業務終わりには、毎日自己学習に取り組んだり、週末はセミナーに参加するなど、もっと知識・技術を身につけようとしているようでした。
しかし、
セミナーで学んできても、臨床で結果が出るわけでもなく、
ただただ、時間とお金だけが減っていくように感じているようでした。
もともと、他の病院と比較しても、決して給料が良い職場ではなかったので、手取りは16万円ほどで家賃と生活費以外の多くはセミナー代に流れているとの事です。
こんな状況が長続きするはずはありません。いずれ疲弊し、ドロップアウトしそうになるのも分かります。
夢と希望を持って取得した「理学療法士」が、実際に働いていてみると、こんな状況です。
「自分に合っていない。」と思ってしまっても仕方がないように感じます。
ただ、彼は理学療法士になって、まだ3,4ヶ月ほどです。
この時点で、将来を大きく変える決断は絶対に早まってはいけません。
私は、彼の話を聞いた上で、
- 新人のうちで理学療法士を辞める人もいるが、1年目ですぐに理学療法士を辞めていった人たちは、今どうなっているのか?
- 本当に辞めて良かったと言える人生を歩んでいるのか?
そんな話から、始めました。
1年目で辞めたがっている新人理学療法士と、私のセッションの内容の一部を公開します。

彼の話を聴いたあと、私は、このように話しました。
辛い状況という事は分かった。
もし、本当に理学療法士が合わないなら、今すぐにでも、辞めて良いと思う。世の中の仕事は、リハビリの仕事だけじゃない。
でも、もう少し落ち着いて考えられるなら、理学療法士を辞めた後に起こるであろう現実的な問題と、心情的な問題を理解したうえで決めた方が良い。
なぜなら、今の話を聞いただけでは、私には、あなたが本当に理学療法士という仕事に合っていないという事に確信が持てないし、辞めた先に良い事が待っているとは思えないから。
きっと、自分でもまだ整理がついていないと思うし、今の段階で辞める事を決意するのは早すぎる気がする。
さらに、私からのアドバイスに耳を傾ける事ができそうかについての確認を行いました。
彼は、少し間を置いてから、
暗い表情のまま小さく頷きながら、私の話を聞く事に同意しました。
結論から言うと、彼は自分を苦しめてしまっている職場を離れ、自分の生き方・働き方にあった病院へと転職を果たしています。
今では、この転職がきっかけで、理学療法士として前向きに患者と向き合い、そして、今でも現役の理学療法士として仕事を続けています。
きっと、同じように悩む新人療法士は決して少なくはないはず!
もし、理学療法士を辞めたいと考えているなら、それを実行する前にもう一回だけ、自分にチャンスを与えてみるというのはどうでしょうか?
別の職場を体験してみて、それでも本当に自分に合っていない職業と言えるのか?それとも、今回の悩みは単に職場環境に恵まれなかっただけなのか?
どうせ辞めるのであれば、それを確認してからでも良いと思います。
逆に、中途半端な気持ちで辞めると、待っているのは後悔です。
「本当にあの時辞めて良かったのかな、、、。」「辞めない方が幸せだったのかな、、、。」そんな事ばかりを考えてしまう毎日がやってきます。
事実、
理学療法士を辞めようと決意したけど、一緒に話し合い、私からのアドバイスを受けた後、自ら転職を決意した方が多数います。
違う職場に転職した結果、現状が一変し、今では、当時の私への悩み相談が笑い話になるくらい、理学療法士としてイキイキと、そして自分らしく頑張っている理学療法士がいます。
私に相談してくれた彼も、今では「あの時に辞めなくて本当に良かった。」と話します。
今回紹介した仕事の悩み相談に来てくれた新人療法士さんも、今では中堅の理学療法士として、当時とは別の職場で後輩指導に当たっています。
そして、当時の自分のように苦しんでいる若手の理学療法士を優しく、そしてパワフルにサポートしているそうです。
あなたも、理学療法士を辞めたいなんて思っていませんか?
多数の理学療法士のカウンセリングを行ってきたなかで、辞める前にまずは他の職場をみてみた方が良いと思っています。
ダラダラと時間だけが過ぎても、自分が疲弊するだけなので、できる事なら今すぐにでも転職した方が良いと思っています。
ただし、転職先を探す方法には、いくつかの方法がありますが、自分一人で動こうとして転職に失敗した人もいるので気をつけてください。
もし不安なら、転職サイトを使う手もあるのですが、その場合は、療法士専門で、尚且つ、転職を徹底的にサポートしてくれるタイプの転職サイトがおすすめです。
他施設の職場環境・人間関係に詳しくないなら、利用するメリットは相当にあります。
もちろん、転職サイトにも良し悪しや、優劣があるので、利用する際は、優良転職サイトの中から選んでください。
理学療法士転職サイトのおすすめランキングの中から選べば、質の悪い転職サイトを除外する事ができます。
理学療法士を辞めずに、転職する事で手にしたモノとは?
彼が転職して手にしたのは、「自分に合った職場に出会えた事」なんてありきたりで、表面的な事に止まらないと思っています。
この転職をきっかけに、一人の理学療法士として、しっかりと自信をつける事ができ、理学療法士の仕事にやりがいや充実感を感じれるようになった事だと思っています。
ここまで来れたら、もし、後々理学療法士を辞めてしまったり、(女性の場合は、)結婚・出産・育児などによって、一旦現場を離れる事になったりしても、いざ復帰するとなった時に、いつでも・どこの職場に行ってもイキイキと自信をもって仕事に取り組める理学療法士になっているはずです。
もし、理学療法士を辞めるたいと思っているなら、その人は、もう動き出すべきタイミングにきているのかもしれません。
新人だからとか、1年目だからとか、そんな事を言っているうちにどんどん疲弊してしまい、結果的に理学療法士を辞める事になってしまっては全く意味がありません。
今の行動が、自分の将来を変えてくれます。将来を見つめて、ポジティブに動き出してみてください。

理学療法士の仕事を続けるために病院を辞めた新人PTが手にした未来

一時は理学療法士を辞めたいと言っていた新人PTが、転職によって何を手に入れる事ができたのか?

※ 個人が特定される可能性がある箇所のみ修正しています。
一人の立派な理学療法士になれるように努力を重ね、自信もちょっとづつですが付いてきました。
もちろん、まだまだですが、今は心にゆとりができているせいか、ちょっとの事では落ち込まなくなりました。
「まずは挑戦してみて、工夫してみて、それでダメだったとしても、まずは一生懸命やる事が大事!」
「きっと、結果は後からついてくるはず!もし上手くいかない場合でも一緒にフォローし合ったり、刺激し合ったりする仲間がいるから大丈夫。」
という風に思えるようになりました。
今では、理学療法士というお仕事が天職と思えるまでになりました。
もう理学療法士を辞めて、他の職業に転職したいと考える事はなくなりました。
ここまで心に変化が出たのは、自分自身を変えた事よりも、環境を変えた事が大きかったと思っています。あのまま、あの環境に身を置いていたら、いずれ心が崩壊して、もう理学療法士を辞めていたかもしれません。
以前の僕は、頑張れば頑張るほど、自分を追い込んだり、苦しめている感じで、周りにも弱いところをなかなか打ち明けられず苦しんでいました。
しかし、今の職場ではその自分の性格が悪い方向に出る事がなくなりました。
なので、自分の性格に合っている職場に移動できた事が一番大きかったと思っています。
僕の転職をサポートしてくれた職業カウンセラーの先生と、担当してくれた転職エージェントの方には感謝の気持ちでいっぱいです。
自分の性格を理解してくれて、より馴染めやすそうな小規模病院で働く事を提案してくれました。
また、わざわざ苦手意識の強いところに飛び込むよりも、自分が好きな分野・興味のある分野が良い。
苦手なところを避ける事は、決して逃げる事ではない。今、見切り発車で理学療法士を辞める事が逃げる事だよ。
というアドバイスが胸に響いています。
このアドバイスをきっかけに転職を果たした今の職場では、仲間の関係が非常に密接で、お互いがライバルというよりは助け合って患者さんのリハビリにあたるという感じです。
僕と同じように、今の職場が合わずに、自分自身を苦しめてしまっている人は、一度、他の職場をみてみるのもアリだと思います。
まずは、一歩踏み出してみて下さい。

理学療法士は、学生時代の長期実習や臨床実習の辛い経験から、「臨床」も苦しいもの、耐えるものと思ってしまっているふしがあると思います。
でも、仕事は自分自身が楽しんでいなければ、良い物・良いサービスを提供する事はできません。
きっとリハビリもそうだと思っています。
転職により、職場を変える事ができた僕は、今では理学療法に対する考え方も大きく変わりました。
良いリハビリを提供するためにも、自分がリハビリの仕事を楽しまないといけないと確信しています。
もし、今の現状で辛いと感じ、理学療法士の仕事が辛いと感じているなら、職場や人間関係などの外部要因かもくるものかもしれません。
本当に合わないなら、辛い実習を乗り越えられるはずがないのに、実習にも合格し、理学療法士の国家資格も取得しています。
すぐに、「理学療法士合っていないから辞める。」というように答えを決めつけずに、まずは他の職場もみてみる事をおすすめします。
まずは、一歩踏み出してみて下さい。
→ 理学療法士におすすめの転職サイトランキング|転職サイトかたろぐをチェックする。
2021/06/06