【質問】理学療法士1年目です。理学療法士の給料の低さに驚いています。今後も、理学療法士の給料が上がるのは期待できないと聞いていますが本当ですか?
例えば、
「年々、理学療法士の給料は減ってきている。」
「初任給は悪くないが昇給がないので、いつまでたっても収入はほとんど変わらない。」
などです。
さらに、看護師や他の医療職よりも年収が低いという現実を知って、正直、将来にかなり不安を感じています。
今後も、理学療法士の給料が上がるのは期待できないと聞いていますが、それは本当ですか?
(20代 男性 理学療法士 ※未婚)
「理学療法士の給料が今後上がるのは難しいか?」と聞かれると、正直、難しいのが現状という答えになります。
まずは、理学療法士の給料や年収についての現状を知る事が重要ですね。一緒に見直していきましょう。
20代 男性 理学療法士からの質問・疑問を3つに要約
- 理学療法士・作業療法士の年収の推移について
- 理学療法士の現在の平均年収や給料などについて知りたい。
- 収入に関する漠然とした不安がある。
理学療法士の給料や年収に疑問を持つ「20代 男性 理学療法士」の方から頂いたご質問を勝手に3点に要約させて頂きました。
質問内容からすると、「理学療法士の給料・年収などのお金事情」に関する疑問や、「今後の年収アップの可能性」などが気になっていると思われます。ここでは、理学療法士のお金事情に不安を持つ若手理学療法へのアドバイスをさせていただきます。
1.ここ数年の理学療法士の平均年収の推移
近年でもっともピークだったのは、平成14年で、平均年収は430万円を超えていました。
後述しますが、現在は、若干の変動をみせながら、400万円前後となっています。
ピーク時からは、30万円以上も低下している事になります。
理学療法士の平均年収の推移平成23年→平成28年
ここ数年は、400万円前後を維持しており、年々減少しているわけではありません。
- 2011(平成23年) 平均年収 396万円
- 2013(平成25年) 平均年収 396万円
- 2016(平成28年) 平均年収 406万円
2.2016(平成28年)「賃金構造基本統計調査(厚生労働省)」の詳細データ
厚生労働省による賃金構造基本統計調査では、理学療法士・作業療法士の月額給与・賞与・年収は以下のように算出されています。
平均年齢:31.8歳
勤続年数:5.3年
労働時間:163時間/月
超過労働:5時間/月
月額給与:28万円
年間賞与:70万円
平均年収:406万円
月収のボリュームゾーン
月収のボリュームゾーンは23万〜27万くらいであり、年収にして300万円〜500万円となっています。
50歳以上の平均年収が580万円を超えていると報告するデータもありますが、調査の母数が少なく、実態を反映していない可能性があるため、500万円と記載しています。少数ではありますが、中にはそれ以上もらっている人もいるようです。
施設規模による平均年収の違い
10〜99人 423万円
100〜999人 401万円
1,000人以上 414万円
10人から99人が最も高くなっていますが、多いほど少なくなるわけではありません。勤務先の規模による変化は、誤差範囲と考える事ができます。
男女の差(性差)
ほかの職業と比較すると男女の給与格差が小さいのが大きな特徴です。子育て世代である25歳〜29歳の年代別平均年収でも10万円の違いしかありません。
男性
平均年収419万円
20歳〜24歳 362万円
25歳〜29歳 395万円
女性
平均年収393万円
20歳〜24歳 324万円
25歳〜29歳 385万円
初任給について
初任給は、専門学校卒で平均23.5万円、年収280~300万円となっています。大卒初任給の相場20.5万円(厚生労働省調べ)と比較しても、平均以上の給料となっています。
昇給について
理学療法士・作業療法士年齢別の年収は、年齢とともに徐々に上がりはするものの500万円で上げ止まりとなっています。
データから読み取ると、平均15年前後で年収は500万となります。
国民平均では「20歳~24歳」から「45歳~49歳」までの約25年間で平均239万円昇給すると言われていますが、理学療法士の昇給は約167万円に留まっています。
なお、男性だけをみてみると、国民平均364万円昇給に対し、理学療法士は168万円昇給に留まり、大きな開きがある事が分かります。
医療・福祉業界、コメディカル比較
作業療法士・言語聴覚士のみの年収を調査したデータがありません。理学療法士と作業療法士、言語聴覚士といった、リハビリセラピストは、ほぼ同じ額とされています。
医療・福祉業界では、医師が最も年収が高く1,000万円を超えていますが、、医療・福祉関係従事者の平均年収は388万円となっており、理学療法士の平均年収自体は、業界内で見ると平均的な水準と言えます。
なお、理学療法士や作業療法士よりも給料が高い医療・福祉の仕事は、医師、歯科医師、放射線技師、薬剤師、看護師です。低い医療・福祉の仕事としては、准看護師、介護支援専門員、歯科衛生士、栄養士、ホームヘルパーとなっています。
他業種との比較
日本人の平均年収は、平均420万円(男性521万円、女性276万円)ですが、医療・福祉業界としての平均年収388万円は、全体の平均以下となっています。
日本の平均年収を吊り上げている業界は、以下の7業界です。
- 電気・ガス・熱供給・水道業
- 金融業・保険業
- 情報通信業
- 建設業
- 学術研究・専門技術サービス・教育・学習支援業
- 製造業
- 不動産・物品賃貸業
医療・福祉業界は、業界の平均年収自体が日本人の平均年収以下となっています。
3.収入に関する漠然とした不安で悲観してはいけない。
ここまで、理学療法士の給料・年収の現実を振り返ってきましたが、これを良しとするかどうかは、個人個人の判断であって、必ずしも悲観するようなデータではありません。
理学療法士・作業療法士の年収が日本人の平均年収を下回っている事を理由に不安を煽る人や広告・情報誌、SNSなどもありますが、水準としては、若干下回るものの、ほぼ平均的水準とも言えます。医療職全体で見ても平均的です。
決して、高くはありませんが、極端に低い数字でもありません。
ここでは紹介していませんが、給与や賞与などは地域差もありますので、その地域での平均所得と比較してみないと、低い方に入るか高い方に入るかわからない場合もあるので、全国平均と比較しただけで悲観する必要はありません。
全国平均だけで良し悪しをつけない事!
そもそも、医療・福祉業界の平均年収が、日本人の平均年収を上回っていない事を踏まえて考える必要もあります。
医療・福祉業界は医師・歯科医師などの一部の領域を除き、決して潤っている業界ではないのは事実です。
性別で考えると、女性理学療法士の場合は、平均を大きく上回る高所得者層に入ります。
また、医療職(コメディカル)にありがちですが、医療職同士で結婚した場合を考えると、日本人の平均世帯年収を大きく超えています。
以下は、日本の結婚している夫婦の平均世帯収入です。
29歳まで:432万円(1カ月あたり36万円)
30~39歳:559万円(1カ月あたり46万円)
40~49歳:647万円(1カ月あたり53万円)
50~59歳:713万円(1カ月あたり59万円)
もし、理学療法士同士で結婚した場合、平均年収約400万円の二人分で800万円と見積もる事ができます。
日本人の平均世帯収入と比較すると、大きく上回っている事が分かると思います。
理学療法士の仕事は、出張などもほとんどありませんし、残業もサラリーマンよりも少ないため、安定して定時で帰れる事も多いので、夫婦共働きがしやすいのも特徴の一つです。
女性が働き続けやすい業界というのも、大きなメリットの一つです。
こういった給与面以外の特徴も考慮すれば、一概に、月額給料や年収のデータを全国平均と比較して悲観する必要はありません。
もし、理学療法士の平均年収を大きく下回るなら注意は必要かも?
理学療法士・作業療法士の給料・年収について紹介してきました。
決して、高給取りではないが、必ずしも悲観すべき数字(年収)ではないという事を説明しましたが、あくまでも理学療法士の平均年収を貰っている場合の話となります。
飛躍的な昇給も期待できないため、もし平均年収を大きく下回るようであれば注意は必要です。
平均年収以上に貰おうとするのは非現実的な部分もありますが、平均的な水準に引き上げるのは決して無理難題ではありません。
理学療法士として働く中で収入面での悩みを持った方から頂いた質問への回答(記事)もありますので、年収アップに悩む方は、そちらのアドバイス記事も合わせて読んでみてください。