【質問】理学療法士が低年収である現実に気づき、リハビリ職を今後も続けるべきか、リハ職以外に転職するべきかで悩んでいます。何かアドバイスはありますか?
給与などの待遇については、他の病院と比較して極端に悪いわけではないが、現在の職場はいずれにしても退職したいと考えています。
以前、一般企業へ勤務している同世代の友人の年収を聞いたときに、理学療法士が低年収である現実に気づかされました。
これまでは自分の事だけを考えていたので、あまり収入面は気にしていませんでしたが、結婚を機に収入について真剣に考えるようになりました。
もし、他職種へ転職するなら、出来るだけ早い方が良いだろうと考えてはいますが、失敗するわけにはいかないので、他職種に転職すると年収は上がるのかを知りたいです。アドバイスお願いします。
(30代 男性 理学療法士 ※既婚)
相談者のように、年収アップのために転職を検討する理学療法士も決して少なくないはずです。では、できるだけ、相談者の収入に関する悩み解決の手助けになれるように情報提供させて頂きます。
30代 男性 理学療法士からの質問・相談
将来に不安を感じている「30代 男性 理学療法士」の方からご質問をいただきました。
- 理学療法士の平均年収と、日本人の平均年収の差は?
- 理学療法士が、年収アップのために転職しやすい職業はあるのか?
- 理学療法士のままで年収を上げる方法とは?
- 「年収が低い=将来真っ暗」と考えるべきなのか?
頂いた質問内容からすると、「理学療法士の仕事そのもの」への不満や不安ではなく、「経済力」に関する不安から他職種への転職も検討しているものと理解できます。
まず、他業種への転職についてですが、結論から言うとおすすめできません。
他業種への転職は年齢的な要素が大きく関わり、25歳を超える難しくなります。未経験領域であるなら、年収は大幅ダウンの可能性も考えおきましょう。
質問者さんの場合、他業種に興味があるというよりも、他と比較した場合の理学療法士の年収の低さが悩みの原因となっているようですので、ここでは、経済的側面から理学療法士を続けるべきか悩む中堅理学療法へのアドバイスとして、質問に答えさせて頂きます。
1.「理学療法士」「日本人」の平均年収・給料の差について
理学療法士・作業療法士の平均年収・収入
2015年の厚生労働省賃金構造基本統計調査では、全国の理学療法士平均年収393万円(平均年齢:29.9歳)となっています。性差については、ほとんどありません。
- 月収・月給 27.4万円
- 年間賞与(ボーナス) 64.6万円
厚生労働省の平成28年賃金構造基本統計調査では、理学療法士および作業療法士の平均年収は31.8歳で約407万円となっています。
調査する年によって、若干の違いはありますが、30歳前後で年収400万円前後で推移(平成19年以降)しており、一応の目安となっています。
理学療法士の給料は、日本人の平均年収より高い?低い?
国税庁が行なった「1年を通じて勤務した給与所得者の1人当たりの平均給与」の調査結果(「平成27年分 民間給与実態統計調査」-国税庁)では、平均420万円となっています。
これを男女別にみてみると、男性521万円、女性276万円となっています。
平均年収と比較すると、男性は理学療法士の方が低く(+128万円)、女性は理学療法士の方が高い(−117)という結果になっています。
このデータだけを見て判断した場合、男性理学療法士は日本人全体の中で収入の低い層になり、女性理学療法士は高い層と言えそうです。
日本人の平均年収を吊り上げている職業とは?
下の棒グラフも、「平成27年分 民間給与実態統計調査(国税庁)」からのものですが、一番右の「全体平均」より高い業種に含まれる職業が、高収入を狙える職業です。
- 電気・ガス・熱供給・水道業
- 金融業・保険業
- 情報通信業
- 建設業
- 学術研究・専門技術サービス・教育・学習支援業
- 製造業
- 不動産・物品賃貸業
上記7業種が、日本人の平均年収を吊り上げている業種です、ちなみに、医療・福祉は、全体平均以下となっており業界的には負け組です。
稼げる可能性があるかどうかは、その業界によるところも大きいので、「もっともっと大きな収入を!」と考えるのであれば、稼げる業界を選ぶ必要があります。
ただし、これまで理学療法士として勤務してきただけの人が、その業種に飛び込めば一気に年収アップするという簡単なものではないので、この点は勘違いしないように気をつけて下さい。
ちなみに、医療・福祉業界では、医師が最も年収が高く1,000万円を超えていますが、、医療・福祉関係従事者の平均年収は決して高くはないので、理学療法士の平均年収自体は、業界内の平均的な水準と言えます。
2.理学療法士が転職して年収アップを期待できる職種
理学療法士は、やはり理学療法士
理学療法士の資格を最大に活かせる仕事は、やはりリハビリテーションの専門家として病院に勤務する事です。理学療法士の資格を生かして転職できる仕事がないわけではありませんが、「年収アップのために」となるとかなり難しくなります。
他職種への転職によって年収アップした場合、資格そのものの存在よりも、「理学療法士時代に培った経験を生かせる人」であり、これは個人の能力や経験値次第になってきます。
「理学療法士の国家資格を取得しているから」という理由だけで他職種で優遇してくれる企業はなかなかありません。
一般のサラリーマンを含めて、他の職種で仕事をする際に、理学療法士時代の経験が生きる事はあると思いますが、資格そのものが活かせる可能性は極めて低いと考えておいた方が良いでしょう。
少なくとも年収アップには直結しません。
それでも、拡大する健康市場の中なら活躍できるかも?
近年の健康市場は、順調に規模を拡大しています。マラソン愛好家や登山家が年々増えていますし、高額のパーソナルトレーニングジムに契約する人や、自転車を趣味とする人(こちらも高額)も増えています。
理学療法士は、職業柄、健康や病気に関する知識、トレーニング理論や動作分析及び動作指導などに長けているため、健康や予防関連事業を行う企業への転職者は、年々増加傾向にあるようです。
スポーツ用品メーカーに勤めたり、ハイクラスフィットネスクラブや、パーソナルトレーニングジムのトレーナーになるなど、理学療法士時代に培った経験を生かして、「年収アップの他職種転職・他業種転職」に成功した人も存在します。
ただし、この場合も、年収が高くなるか低くなるかは、どの企業に務めるかにかかってきます。
特殊な技能や経験、メディアを通した発信力などを持っていない人が、「理学療法士の資格」を生かす方法となると、他職種の道を探すよりも、やはり医療施設や介護保険施設、訪問看護(訪問リハ)などで、理学療法士として勤務する方が確実と言えそうです。
3.理学療法士として年収を上げるための転職裏技2つ
収入アップの転職なら地方から都市へ
どの仕事にも言える事ですが、保険診療下で働く理学療法士・作業療法士にも給料の地域格差があります。関東、関西などの都市部であれば、年収は高い傾向となりますが、地方にいくと平均年収は低下します。
もし、地方の方が転職きっかけで収入をあげたいなら、関東・関西で働く事は一つの年収アップの手段になります。今の勤務先にて、地域の平均給料を貰っている人については、転職による極端な年収アップは期待できません。
昇給交渉に評判の良い転職サイトを使っても難しいものは難しいに変わりありません。
地方にいる人が、都市部や、今いる地域よりも平均年収が高いエリアへ転職すれば、転職きっかけで大幅な収入アップを期待する事ができます。
誰にでも可能な方法ではありませんが、単身者で、どうしても年収を上げたいという人については一つの選択肢となります。
副業収入は昇給よりも期待大!
理学療法士の場合、副業は、本業以上に年収を上げる簡単な方法です。「簡単」と言うと語弊があるかもしれませんが、理学療法士や作業療法士の昇給率の低さと比較すると「簡単」の意味が分かります。
理学療法士や作業療法士は、初任給には恵まれていますが、2年目以降の昇給はほぼ期待できません。
基本給 5,000円を上げるのも簡単な事ではなく、「その額を毎年」となるとほぼ無理です。そんな病院はありません。
月給5,000円の昇給で、年収は単純計算で60,000円〜75,000円(賞与分)アップとなりますが、
個人でもすぐに開始できるブログやインターネットによって副収入を得る方法であれば、3〜5万円/月を目指すのは可能です。それ以上となると、かなり大変ですが、、、。
仮に月5万円の副収入があれば、年収60万円アップです。月3万円の場合でも36万円アップとなります。
1年間必死にネット運営に取り組み、上手くいけば年収36〜60万円です。本業の年収7万5000円アップより遥かに大きい額ですよね。
その他にも講演会や、セミナー活動、理学療法士としてのバイトなど、本業で昇給を狙うよりも効率が良い場合が多いです。ここでは副業に関する紹介はここまでにとどめますが、ここで言いたい事は、副業で稼ぐためにはそれなりの時間的余裕が必要になります。
- インターネットの場合は1日3時間くらいの副業時間を作れるか
- バイトであれば、週1日(月4日)の時間を作れるか
どちらも本業で疲弊している状態では厳しいので、副業に取組むを時間を捻出するために、「残業なし、拘束時間が短い職場」へ、収入維持の条件で転職するというのが必要になる人もいると思います。
本業で昇給を狙いにくい職業である以上、副業しやすい環境に身をおくというのも、年収をアップさせる一つの方法です。
4.療法士の収入は、世帯年収で考えると平均以上
日本人の平均世帯年収とは?
結婚を機に年収の悩みが大きくなった人の場合は、少し「年収」に関する考え方を広げてみる事も良い事です。
まだ未婚の場合はどうしても個人(理学療法士)の収入額が、一般職の平均年収より低い事を心配してしまいがちですが、お互い療法士で結婚した場合は、お互いの年収を合わせた世帯年収で考えてみて下さい。
以下の表は、日本の結婚している夫婦の平均世帯収入です。
29歳まで:432万円(1カ月あたり36万円)
30~39歳:559万円(1カ月あたり46万円)
40~49歳:647万円(1カ月あたり53万円)
50~59歳:713万円(1カ月あたり59万円)
PT・OTのセラピスト同士で結婚した場合の世帯年収
もし、理学療法士同士や、セラピスト同士で結婚した場合(もちろん共働きで)、今もらっている額のおおよそ2倍(セラピストの給料はほぼ男女差がない)が世帯収入と見積もる事ができます。(これなら、まだ結婚していない人でも想像の世帯年収で比較する事ができます。)
理学療法士の平均年収を390万円で計算した場合、想定できる世帯収入は780万円となります。
この数字を見れば少し安心しませんか?
つまり、療法士同士で結婚している方は、それほど目先の年収アップ・給与アップに振り回され必要はなく、働きやすい職場で長く仕事を続ける事の方が重要だったりします。
残業がなく、また営業職のように外部要因によって急なスケジュールの調整なども起こりにくく、ライフワークバランスを保ちやすいという特徴があります。
医療職は職場結婚が多いのも特徴の一つです。療法士同士の夫婦で共働きであれば、世帯収入で考えた時に、収入面の心配は人並み程度にとどめて、あまり将来に悲観する必要はありません。
もちろん、同じセラピスト同士でなくても、お互いの年収がほぼ同じくらいの人と結婚しているのであれば、ここで説明した事と同じ事が言えます。
なんとなく漠然とした不安をかかえている人も多い理学療法士の給料問題ですが、もし世帯年収で考える事ができるなら、社会的には平均以上の収入となる事を知って、少し理学療法士の経済面に関する不安も変わってくるのではないでしょうか。